中林 孝雄(なかばやし たかお)
Takao Nakabayashi

新現美術協会50年史掲載(2000年12月刊行)

「自分と自然との闘い」

真っ白い平面画面にある日突然こんなことを描いて見ようと思った。アドベンチュアしなければ新しい視野と脈打つ感覚の表現を得るには、写し画では遅々として進まないのではと、こんな思いが、様々な色と線で、身近な思い出を呼び起こした。それが我が幼少の頃の思い出である。四囲を見渡し、遠くを眺めたりした。その遠くの山に、家の夜の明かりがポツリポツリと点在し、人々の生活を感じ、川には湧水があり米を洗い旅人は喉の渇きを潤し、夕方にはホタルが飛び交う清らかな川の流れであった。そんな自然との触れあいから75年の今はその面影は無い我が歳と共に自然もまた老いたのであろうか。風は春には希望を夏には涼しさを、秋には一抹の寂しさを、冬には厳しさを与えて通り過ぎてゆく。過去も現在も。だが心の中に生き残り、自然と人々の間に生かされ、生きて見果てぬ夢を追い求めて、移り変わりの中で、経験と努力を積重ねて自分を培っていく。一筆を又、一筆と、画面に、時には早く時には遅く速度を変えて移動する。それでも尚未だゴールはない。踏まれても折られてもなお芽を吹く、吾亦紅の花穂の様に山野に自生する雑草の如く、コンクリートの無い自分を愛し、人々を愛する温もりのある大地を旅する。

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